『青の稲妻』『私たちの十年』

ユーロスペースで見てきました。
藤井省三トークショウ付きで、市山プロデュサーとの対談。
なんか舞台となった都市に行った、日本人の生の声はおもしろかった。
藤井先生はまじめー、そしてアクのない感じの人でした。
まぁそれ以外は目新しいおもしろい話もなく、時間も短かったので。


そして賈樟柯『青の稲妻』
原題は『任逍遥 Unknown Pleasures』
実は友達から借りたことがあって、何回か挫折しています。
映画館のスクリーンで見るとかなり印象が違う。
デジタルカメラの手撮りでとってるんやろうけど、それが映画館で見るとなんか味がでてて。
ぶれにぶれる画面、荒い画素… 自分がすぐ後ろから追って行ってるような感覚。
これはうちのちっさい画面では伝わらんわな。
やっぱりドキュメンタリー撮ってる監督だけあって、このへんのタッチはうまい。
しかも、音楽。
たぶんこの映像だけだと、単なるドキュメンタリーであって、「映画」には成り得なかったのでは、と思う。
「任逍遙」という台湾のポップソング(大ヒットしたらしい)がすごく効果的に用いられている。
またそれだけでなく、街の音、雑踏、人の声。
全てが計算されて配置されているような、心証を写すような用い方。
やっぱり「映画」だな、と感じたのでした。


お話的にもゲリラ的というか、中央の臭いがしないのが好感度高いです(笑)
各国資本、オフィス北野とかも参加しての制作。
この前の『世界』でも触れましたが、中国映画ぽくないリアルな中国という印象。
ちゃんとした若者の映画が登場したな、と。
そして監督自身もドキュメンタリー撮る人だと知って、それも納得。
内陸の山西省清朝時代は金融経済の中心であった地が、沿岸の経済発展においていかれている。
そのなかでも地方都市である「大同」を舞台とした、無軌道な若者達の群像。
なんとなく『青春残酷物語』に通じるのを感じた。
下手な俳優をつかったり、素人俳優をわざわざつかって劇口調ぽくない演出。
なんとなく大島渚?といった感想を持ちました。
主演女優の趙濤がどんどんかわいくなってく。
なんとなく出口の見えないなかで、威勢だけはよく虚勢をはって、つっぱる。
今までの中国映画にありがちな、善悪の対立とか、思想的なまじめさは一切ない。
そこにはただ「人」がいて、普通に生きてる。
なんか肩肘張ってない中国人て初めてみた感覚。
駄目人間でもなく、悪い人でもない、普通の人が普通に生きてるって、ありそうで見たことがなかった。
あの広い大陸でこれが撮れるのは正直羨ましいし、すごい。
商業映画としては売れないだろなー、けどすごい作品でした。


『私たちの十年』
これは10分少々の短い作品。
列車内のセットと外の風景の違和感がすごい。
これはもう少しがんばって欲しかった。
うまい商業監督なら、もっとエンターテイメントに仕上げたであろうところを、
落ち着いた、悪く言えば曖昧に撮ったのはさすがといったところ(笑)
ただ曖昧に撮らないと伝えられなかったことがあったのでは、と思った。
この作品自体がある新聞社の10周年記念に撮ったものなので。
中国における報道、そして映画について少し思いが巡る作品。


中国の第5世代は文革後の固定化された映画表現からの脱却を目指し、彼ら自身高度に「映画化」されたものを目指した。
つまり、世界の映画の水準に近づくような身近らの映画言語を獲得しようと模索した。
その試みは『黄土地』『紅高梁』などで世界に問われ、認められた。
賈樟柯はなんかその辺はすっ飛ばして、または所与のものとして、自然体の気がする。
なんか国家とか思想とかいう看板を背負ってない。
「自由な個人」て気持ち悪い言い方ですが、そんな感じ。
今回はとりあえず書きたいことを書いた感じ、
では